巨匠来校

今年も残すところ僅かとなりました。井尻教室には、最年長の生徒さんがレッスンに来られました。尺八、ウクレレ、ピアノを習う大の音楽好きです。中でも尺八歴は30年以上。地域のボランティアで、水道管を使った尺八教室を主宰されています。そしてなんと、88歳にして現役の税理士。前向きな気持ちと、行動力には頭が下がります。70代、80代の方は本当にたくさんの童謡、唱歌、軍歌を鮮明に覚えていらっしゃいます。よく「これは知ってる?」とメロディーを探り弾きして聴かせてもらうのですが、残念なことに知らない曲の方が多いです。iphoneもテープレコーダーもなく、記譜法も存在しなかった時代にもメロディーはありました。それは口伝えで継承されたもの。「継承すること」はピアノのレッスンでも大事な要素です。巨匠を前には、レスナーの僕が逆に何かを伝えられている思いがします。という事で、本日は仕事納めでございます。ご購読ありがとうございました。皆様、よいお年を。

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糸島へ

先日は一年ぶりに、糸島のピアノ工房へ。シンガポールから一時帰省中のお客さんを連れて行ったので、ピアノあれこれ話の他、海外生活の楽しい話で盛り上がり、気がついたらすっかり長居してしまいました。この日、木目調のアップライトピアノ3台と、カワイのグランドがほぼ仕上がっている状態でした。グランドは、入念な調整と、丁寧に磨かれた外装に釣り合わないビックリ特価。ほんとに、このピアノ工房の変わらない仕事ぶりには脱帽します。その他、見た事も無いメーカーのアンティーク調のピアノや戦前の国産グランドなど、珍ピアノもあり。置物としては迫力があってよさそうですが、如何せんサイズがね。ということで、行き先がないそうです。糸島にはいろいろなジャンルのこだわり工房が点在しています。海あり山ありで眺めもいいし、ドライブにも最適ですよ。

 

そしてクリスマス。一年前に工房で買ったディアパソンを置いている警固教室に、セミナー用の椅子が届きました。お世話になっているヤマハの方からの、嬉しいクリスマスプレゼントです。ありがとうございます。使える物はリサイクルしないとね。これで20名収容のサロンになりましたけど、どんなイベントがいいでしょうか。

 

初、発表会

ピアノの発表会というと、入れ替わり子供たちがステージに出てきて一礼し、演奏して、また一礼して袖に引き返す。このパターンが粛々と続きます。コンクールは、時間の制約も厳しいので、さらに次から次へ、殺伐と同じ光景が繰り返されます。めくられる番号札。弾いているのは皆同じ曲。なんだかなぁ。イベントで「退屈」を提供するのは、とても罪な事です。なので、僕なりに工夫をしてみました。概ね上手くいったようです。試したかったのは、参加者全員が自由にコミュニケーションできるようにすることと、みんなで一つのテーマについて考えて議論する事。二つ目は、先生の技量が問われるので、反省点がたくさんありますが。演奏はみんな生き生きとして、素晴らしかったですよ。お客さんの飛び入り演奏も加わって、盛り上がりました。そして、僕も弾くことに。次回はまた新しいアイディアを取り入れて、面白い会にしたいと思います。では皆さん、楽しいクリスマスを。

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Ich liebe dich ! がやみつきになる老夫妻と中年男と若僧

今日はドイツ人指揮者のLさんとその声楽家の奥さんと、テノール歌手のZさんも一緒に、幸福な音楽の時間を過ごす事ができました。壁一面に並んでいる使い込んだ楽譜とレコード。静かに佇む一台の古いスタインウェイ。壁には小さな色あせたモーツァルトの肖像画が掛かっていて、こちらを見つめています。80年の人生と、脈々と受け継がれるクラシックの歴史を感じるレッスン室です。僕は音楽家のレッスン室が好きです。本物のレッスン室は、独特の匂いがします。奏でられた音が、本棚の楽譜と楽譜の隙間に入り込んで、壁にも絨毯にも染み付いています。神聖な空間です。3月にコンサートで弾く、シューマンの「詩人の恋」をレッスンしてもらったのですが、今回つくづく感じたのが言葉の大切さ。当たり前の事ですけど、もっともっと正確にやらないと。僕のドイツ留学で得た一番の収穫は、ドイツ語の発音と語感がイメージできるようになったこと。でも歌曲の伴奏をやって、今回レッスンを受けて、強烈に言葉の大切さと美しさを再確認しました。音楽が言葉になって聴こえだすと、やみつきになります。Ich liebe dich.(I love you.) のフレーズを何回も何回も、本当にバカらしくて笑えるくらい繰り返して教えてくれる老夫妻の姿を見て、言葉って、音楽って素晴らしいなと思いました。

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発表会のお知らせ

ピアノを弾いて得する事って、なんでしょうか。「習い事はピアノだけでいい」と断言する脳科学者の方もいらっしゃいますね。学術的にたくさんの根拠が挙がってくるでしょう。僕は学者ではないですが、20年以上毎日ピアノを弾き続けて来た経験から、ピアノが脳にいい理由、子供の成長にいい理由、大人にもいい理由がたくさん思いつきます。そんなことはひとまず忘れて、ピアノを弾いて得する事、僕はこれだと思います。自分を幸せにする。そして、他者も幸せにする。かっこつけた言葉です。でも間違いありません。

 

12月16日、mochicoピアノスクールの新入生3名による発表会があります。当スクールではピアノがバリバリ上達するのはもちろんのこと、スクール理念に掲げる通り、音楽を通して共感し、共感してもらえる力を大切にしています。どんな演奏になるのか、ワクワクしています。発表会と同時にセミナー&懇親会も開催します。ご興味のある方は是非お越し下さい。

 

場所:ピアノスクール警固教室 

日時:12月16日(日) 14時~16時

参加費:無料

要予約、現在残席3~4名、お問い合わせ

 

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紅葉とクリスマスの間

こんな真っ赤な紅葉を見たのは久しぶりです。はっとしますね。カメラを持ってわざわざ見に行きました。これとは別に井尻のレッスン室から見える、若いけやき並木もよかったです。華奢な枝葉と控えめな黄色がローカルな感じで。それも今朝の雨で殆ど落葉してしまい、細い体つきなのでますます寒そうに見えます。かろうじて頭に枯れ葉が乗っています。紅葉が過ぎると、次は冬。クリスマスです。そういえば紅葉とオーバーラップして、街中で青白いイルミネーションがキラキラしている光景は不思議ですね。と言いつつも、昨日の夜は一足早く、ドイツのクリスマスケーキ、シュトーレンを食べました。頂いたものなのですが、手作りと聞いてびっくり。しっとりベースだけど少しだけさくっとした木の実の食感、ブランデーの香りと果物の甘みのバランスもいいし、見た目も本格的。ドイツらしい素朴なケーキが日本の細やかさでアレンジしてあります。あっ写真撮るのまた忘れた。

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インベンションが好き

この頃、小学生のレッスンに導入したバッハのコラール(賛美歌)の聴音。各パートを聴き分けて楽しく歌っています。4声のコラールに慣れて自然な和声感覚が身に付けば、見据えるのはバッハのインヴェンション。その先には広大なクラシック音楽の大海原です。インヴェンションは2声の対位法ですが、根底には豊かなハーモニーがたゆみなく流れています。「聴こえる耳」が育っていれば、きっと楽しいはず。

 

ピアノを習った方なら一度は耳にしたでしょう。バッハのインヴェンション。子供のレッスンでインヴェンションにこだわる理由は、求められる能力の多様さと、得られる音楽性の多様さにあります。ところが、幼い頃からピアノを習っていてもインヴェンションでつまずいてピアノが嫌いになるケースがとても多いのです。子供のコンクールでは、上手に弾いているようで無味乾燥な演奏が目立ちます。きっと分かりにくいんでしょうね。子供にとって、そして先生にとっても。だったらやらなくてもいいじゃない。確かに、嫌いになるくらいならやらない方がいい。でもつまずくという事は何かが欠けている訳ですから、そのまま続けてもなかなか上達しません。譜読みが大変、塾に行かなきゃとなって、小学校5、6年くらいに辞めてしまいます。ゴールデンエイジにピアノを練習しているかいないかで、習得度には大きな差がつきます。結局大事だったのはインヴェンションに差し掛かる前に「聴こえる耳」にする、言わばピアノを弾く土台作りにあったと言えるのです。音楽の父大バッハの残した、音楽を愛する人類のための教科書。ありがたや。

ラーメン食べてベートーヴェン

福岡も寒くなりましたね。ラーメンが食べたくなって一風堂に行きました。白丸、半熟塩たまご付き、美味しかった。ご馳走様です。ご飯のブログの時に、いつも写真がない事を後悔します。けれど目の前に出てきた料理を前にぱちっとシャッターを押せないのです。早く食べたくて、そのひと手間ができない。さらに都合のいい言い訳をすると、作った人の気持ちになれば「早く箸つけんかい」と思うんじゃないかなと。料理は出来た瞬間が一番美味しいわけだし。今日は一日練習時間が取れたので、譜読みが進みました。ベートーヴェンのソナタ、op.109。晩年に書かれた、ロマンティックで力強い骨組みの繊細な曲です。考えてみると新しくベートーヴェンのソナタに取り組むのは、3年ぶりです。始めるのにヨイショと腰を上げなくてはいけません。大作なので体力が要る。とんこつラーメンが要るのです。

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ドイツのロシアのピアノ教育

表紙はピアノを弾くクマの親子。これ、ロシアで定番のピアノ教本です。2週間くらい前にアマゾンで注文して、今日届きました。赤が1巻で、青が2巻。そして緑はいろいろな時代からセレクトした曲集になっています。2巻は何故か別送とのことで、まだ手元にありません。表紙絵は3巻とも全部同じで、中身には何もイラストはなく至ってシンプル。海外発送のため少し割高だったけど、本の価格は分厚さと内容量に比べればかなり安い。これが数多くの名ピアニストを生み続けるロシアのピアノ教本。タイトル。「DIE RUSSISCHE KLAVIERSCHULE」ドイツ語に翻訳されたもので、1999年に出版されています。ドイツ人って教育を体系化するのがすごく好きですね。バイエル、チェルニー、ブルグミュラーもドイツ人。サッカーでもそう。世界で活躍している監督、トレーナーの多くはドイツで研修を受けて、指導者資格を取得しています。岡田監督もその一人じゃなかったっけ。

 

序文の頭に読みたい文が書いてありました。ネイガウス曰く(ロシアの歴史的ピアノ教育者)、「芸術性の形成は、はじめのレッスンで音を学ぶときから始まる。子供がとてもやさしいメロディーをまねする時、それは表現豊かになるように努めなければならないし、メロディーの性格を一致させなければならない」なるほど。そして序文は続きます。すごく簡略すると、よくある間違った初歩のピアノレッスンは、楽譜に書いてあることを直ぐにピアノで再現させる。読む→弾く→聴く。これでは、弾く前に音を想像する課程が欠落するので音楽性が育たない。そうではなく、読む→聴く→弾くの順番になるようにレッスンを進めるべきである。そして序文の最後はこう結んである。「レッスンの最初の年の終わりには五本の指を使い、広い音域でのポジショニング、両手の交差、スケールを長調で4か5種類を平行、シンメトリーで、短調で2か3種類を平行で、短いアルペッジョ、三和音、手首のスタッカート、手の跳躍を習得する。そうすれば簡単な伴奏とメロディーが、とても簡単な2声の対位法が弾けるだろう」そりゃそうでしょ。最初の一年でというところに、ロシア英才教育の凄みを感じます。早い時期に運動のすべてを無理なく取り入れるという点では納得です。その通り。

 

この序文は耳が痛いです。今、日本の楽器店に並ぶピアノ初歩教材のほとんどは、最初のページで「ドのイチはココデスヨ」と言っているじゃないの。しかも馴染めないイラスト付きでテカテカした表紙が何冊も何冊も。なんで?なんでこの教本が見つからないの?翻訳の仕事来ないかな。

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オクトーバーフェスト

先週から博多の冷泉公園で開催されているオクトーバーフェスト。外でビールを飲むにはちょっと寒そうな季節ですが、わいわい賑わっていました。大きなテントの中にステージが作られていて愉快な音楽付きです。お尻がボテボテ落ちるようなドイツの田舎っぽい4拍子のリズム。ビールが進む。ドイツの有名ビールから、見た事もない日本の銘柄も揃っているのでビールファンにはたまらないお祭りです。Weizen Bier(酵母が濾過されていないビール)やSchwarz Bierも勢揃いしています。Weizen Bierは濾過の具合でクリスタル、ヘーフェ、ドゥンケルといって濃度も違う。北ドイツには殆どのレストランでヘーフェヴァイツェンが置いてありました。喉越しと苦み指向のビールとは全く違う、まろやかでコクがあって、麦の香りがフワッと広がる大地を感じるビール。晴れた日にのんびりテラスで飲みたい。ああ、最高に美味しい。Schwarz Bier(黒ビール)は旧東ドイツのヴァイマールで飲んだ時に感動した。この辺りは有名黒ビールのケストリッツァーの本場で、夕方ビアホールに行くと皆黒ビールを飲んでいる。日が暮れて、蝋燭明かりの重厚な木組みの内装がよく似合うのだ。意外にもWeizen Bierほど濃厚ではなくスッキリしていて品がある。漆黒の闇に消えてなくなる繊細な泡の様子は、ビールのくせに綺麗で鑑賞に値する。オクトーバーフェストは19日から昨日まで開催されていて、連日大賑わいだったようです。懐かしいビールとソーセージをつまんで、帰りに蕎麦で締めました。ビールのせいか夜の風はひんやり冷たく、早くも冬の気配を感じました。

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グレン・グールドは永遠に

没後30年ということで、BSで特集がありました。書店の音楽書のコーナに立ってみると気がつく事ですが、グールド程関連書が出版されている演奏家はいないでしょう。僕自身、10代の頃に熱心に聴きました。その魅力に取り憑かれるファンが後を絶たないというのは納得です。真夏にコート、低いボロボロのイスなど昔から逸話にも事欠きません。ところが近年、以前にも増してグールドの残した音源からかけ離れ、話題を呼ぶネタ作りがせっせとなされているようで、何とも不可解な気分です。服装、食生活、さらには女性関係に至るまで、ワイドショーにも度が過ぎる。今日の番組ではグールドの愛食していたビスケット(カナダでは何処のスーパーにでも売っているらしい)まで登場しました。あとファミレスでスクランブルエッグを毎日食べていたとか。異端児、奇才、天才、個性、こだわりなど、芸術家を彩る言葉の裏付けなのでしょう。欧米では毎朝卵を食べるのはあたりまえ。ゆで卵、目玉焼き、スクランブルエッグ派に別れる。それに50年も昔のカナダに何種類もビスケットがありますかね。パッケージを見たところ日本のビスコみたいなものです。言ってしまえば僕だってほぼ毎朝バナナを食べているし、コンビニでは同じ水しか買わないのだ。スターではないので話題にしても仕方ないけれど。

 

音源紹介では、今までのピアニストはこんな風に弾いていたのをグールドだとこう。といった感じで、他の個性溢れる往年の巨匠が伝統に捕われた古い演奏で、グールドは斬新で個性的と言っています。またクラシック音楽では作曲家が王様で演奏者は家来。グールドはそうではなかった。など意味不明で幼稚なグールド論が展開されているではないか。テレビなので分かりやすいが最優先なのでしょう。やはり演奏をしっかり聴いて欲しい。もちろん素晴らしいと思います。個性的だと思います。でも他にもいろいろ聴いてみると、弾き手によって全く作品の見え方が変わります。ゼルキンとルービンシュタイン、ブレンデルとポリーニなどひっくり返したように違う。びっくりします、こんなに違った人が同じ分野で輝けるのかと。ワイドショーは十分なので、グールドを通じてクラシック音楽全体に興味が湧く取り上げ方をして欲しいです。

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行ってきました

このホームページでもご紹介していた石橋美術館の「あなたに見せたい絵があります。」へ行ってきました。これに続き、九州国立博物館のフェルメールでは、「あなたに会わせたい少女がいます。」だそうです。字数が収まり悪いような。石橋美術館の方はチラシのピカソ作「腕組みして座るサルタンバンク」がずっと気になっていたので、やっと会えたという感じです。実際に行ってみて驚きました。まずコレクションの充実ぶり。久留米ゆかりの青木繁、坂本繁二郎はもちろん、黒田清輝、岸田劉生、フジタなど日本画家の作品の他に、レンブラント、セザンヌ、モネ、ルノアール、ルオー、ゴッホ、マティス、ミロなどオールスターの作品がバランスよく集められてあります。解説も大きな字で短くてよい。それと今回はやはりピカソに眼が向きました。部屋に入ると瞬時に飛び込んでくる迷いのない強い線と色彩。圧倒的な存在感。どの角度から見ても巧みさが際立つ。今風に言うなら「もってる。」って感じですかね。題名は忘れたけど、ブルーの背景で描いた白亜の女性像もよかったです。殆ど二色の小さく鮮やかな絵。他にもコンパクトな名作が沢山ありました。充実度満点。

 

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デュオコンサート

佐々木君とのデュオコンサートが無事終了しました。聴きに来てくださった皆様、お手伝い下さったスタッフの皆様、ありがとうございました。大分、福岡(ベニールカフェ)でのサロンコンサートを経て、北九州と福岡のホール公演は息もぴったり合って気持ちよく演奏出来ました。ピアノソロも手応えのある内容でした。よい感覚を忘れずに次に繋げたいと思います。北九州のウェル戸畑は小規模のホールながらピアノと残響が丁度よかったです。福岡の会場は10年くらい前に発表会で弾いた事があったふくふくプラザで、懐かしい響きでした。アンコールで度々登場した武満徹の「小さな空」。すっかりお気に入りになりました。一度聴いたら口ずさみたくなるメロディー、本当に素晴らしい。それに、今回サロンコンサートやアンコールで取り入れた、オーバー・ザ・レインボー、イェスタデイなどの新ジャンル。ちょっと弾いてみると、なんかいいですね。悪くないです。今日は見事な秋晴れ。久しぶりに朝から出かけてみようかな。

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音楽と花束とバウムクーヘン

先週末のメゾン・ド・ヨシダでのコンサートでお客さんに頂いた花束。レッスン室のテーブルの上で綺麗に咲いています。コンサート後の余韻を残して、一週間くらいの間は部屋を賑わしてくれます。コンサート会場には円卓が並んでいて、一つ一つのテーブルの中央に花が飾られていました。いつになくリッチな雰囲気の中での演奏。素敵な経験になりました。それにしても花と音楽と美味しい食事というのは最高に贅沢な一時ですね。五感をフルに刺激して、時間を大いに楽しむという。

 

今日の感動は、お土産でもらったバウムクーヘンラスクが美味しかった事。バウムクーヘンとはしっとりしているのが身上とばかり思っていて、しっとりしているかどうかが、評価の最大の基準となっていました。そのバウムクーヘンを乾燥させてしまうなんて。あたりまえと思っていても、見直して発見できるという事ですね。頑張ります。

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最近の悩み

ここ数日、ひどい口内炎に悩まされています。痛みが気になる程大きくなるのは珍しいです。口の中を噛んだかといえばそんな気もするし、最近ストレスがあるのかというと、全くない訳ではない。でもたいていは口の中を噛んでも知らずと治癒しているし、ストレスは感じにくい性格です。だからなぜこんなに酷くなったのか不思議なのです。実は子供の時に、口内炎にまつわる苦い体験があります。口の中のデキモノが珍しかったのか、痛みを誤摩化すためなのか、治りかけていた白い口内炎をちゅうちゅう吸っていたせいで、それが肥大化して残ってしまったのです。こうなると、手術による切開しか方法がなく、わざわざ近所の病院で紹介状を書いてもらって口内炎切開の名医?のところまで行ったのでした。手術と名のつくものは初めてで、仰向けに見上げたてんとう虫みたいな眩しい光は、強烈に目に焼き付きました。怖かったな。

 

今が痛みのピークで、問題なければ一週間程で治るはず。そういえばある脳科学者が、適度な痛みはあがりや緊張を押さえて、集中力を高める効果があると言っていました。今週末からは本番が多くなるので、果たして痛みを集中力に変えられるのか試してみたい気もするのですが。でも早く治るに越した事はありませんね。今は水でさえしみるので。

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雨の日、美術館

朝からしとしと雨。月曜、火曜と引きこもっていたので「日本画の巨匠たち」を見に福岡市美術館に行ってきました。日本画ってあまり馴染みがないです。ゴッホとかフェルメールの人気に比べて地味なイメージ。今回は岡倉天心に始まり平山郁夫へと現代に至るまでの日本画が集められています。近代化する前の屏風絵など、ヨーロッパの宗教画のようですね。こんなのもいいなあと思うのですが、不思議と随分古いものを見ている感じです。横山大観ら日本画の先駆者たち4人が、日本美術院の畳の部屋に並び正座し描いている写真がありました。まるで近代化を急ぐ様を映した一枚。100年の日本画の歴史がざっと垣間みれました。福岡市美術館は相変わらずの佇まいで、近代化が遅れているようです。ちょうど美術館を出た頃には雨も上がっていたので、大濠公園を散歩しました。この辺りの景観は素晴らしい。向日葵が沢山植えてあり、まだまだ元気いっぱいです。

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ピアノ適齢期

ピアノのレッスンを始めるのは早い方がいいと半ば常識のようになっています。「何歳から始められますか?」「今からじゃ遅いですか?」よくこんな質問をされるのですが、「早い方がいいけれども、いつ始めても遅いという事はないですよ。」いつもそんな風に返しています。大人初心者からスタートして半年程レッスンに通われている女性で、最近は易しいポピュラーな曲をなかなかスムーズに弾く方がいます。僕自身この進歩には驚きなのですが、意外と何歳からでも上達するものです。次の目標は「ムーン・リバー」。雰囲気が出るといいですね。

 

「脳の学習力」という脳科学の本には、脳の変化は急速に起きるとあります。何年も厳しい訓練を積み重ねた音楽家の脳が変化しているのは想像できますが、ピアノを弾いた事がない成人が5日間にわたって1日2時間ピアノの練習をしただけで両側の脳に多大な変化が起きるそうです。変化する部位は音を処理する部分の聴覚野、それから運動機能の制御や感覚の処理を司る皮質。これがヴァイオリンだと左手の指先に多く刺激が加わるため、右側の脳の聴覚野及び感覚運動皮質だけが拡大、変化するらしい。そしてもうひとつ見逃せないのは、筋トレなどと同様に、練習を続けなければせっかく鍛えた脳も急速に衰退するそうです。続けるのが大切ですね。練習しましょう。「ピアニストを科学する」という本は結構売れているみたい。ピアノと脳科学を繋げて、面白く紹介してあります。

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工房西

ヨーロッパでは古いものを大事に手入れして、長く使うという考え方が定着しています。特に住宅や、家具などは生活の基盤。半世紀前の建物や100年使い込まれた木の家具が現役だったりして、よく頑張ってるなと感心します。モダンな作りの母校アムステルダム音楽院にもぽつりと焦げ茶色に変色した古いベンチがありました。びくともしない静かな佇まいで。ある修道院では4千年の時を経て、肘の後が窪んだ大きな石のテーブルが今でも使われているそうです。大陸文化ってとてつもないスケールです。日本もポジティブに捉えると円熟社会を迎えるので、物の価値観も変わってくるかもしれません。とはいってもIKEAが大流行しているので二極化の道を辿るのか。

 

糸島で長年家具作りをされている作家さんをご紹介します。今月末から天神で展示会を開催されます。長く使える暖かい木の家具で、細部に新しいセンスが光ります。8/27~9/2 新天町北通り ギャラリー風 http://koubou-nishi.com

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二十年振りの再会

今の歳で20年前の記憶はかなり遠い。恐らく今までで一番久しぶりの再会じゃないかな。10月のコンサートで共演する佐々木洋平君はなんと小学1年生の時の同級生。彼が転校してからはお互い知る由もなくそれぞれの道を歩んでいた訳だけど、まさか一緒に演奏することになるなんて。人生は巡り会いですね。風の便りで僕の近況を知ったらしく、一ヶ月前くらいに突然のオファーがあり、ついに彼がリハーサルにやってきました。確かに子供の時から声が高い(イメージ)。今となっては立派なテノール歌手になって、鍛えられた高音がガンガン出てきて爽快です。そして初リハーサルなのに、不思議と、前にも合わせたことがあるような感じなのです。シューマン、バッハ、それから武満の「小さな空」を歌ってみました。小さな空の歌詞は「いたずらがすぎて、しかられてないた、こどものころをおもいだした。」と続きます。お互いそんな歳になったのかと思ってしまいました。リハーサルの終わった後に、昔の記憶がまた少しずつ蘇って来ました。演奏を通じて人と出会える時、そして再会出来る時、音楽やってて良かったと思う瞬間です。果たしてどんなコンサートになるか楽しみです。

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温泉強化合宿

ドイツ歌曲のレパートリーを開拓すべく、ここ最近はベートーヴェン、シューベルト、シューマンなどに取り組んでいます。先日はテノール歌手の先輩に連れられて、別府の会場でのリハーサルを兼ねた温泉ツアーへ。会場は明治の旅館建築として名高く、情緒と風格のある素晴らしい造りです。別府はアルゲリッチゆかりの地でもあるので、地元の音楽への関心度は高いそうです。午前、午後としっかり合わせ練習をした後、蒸し湯という珍しい温泉に案内されました。簡単に説明すると、温泉の蒸気のサウナみたいなもの。天井の低い密室に敷き詰められた藁の上に寝て、満足するまで汗を流すわけですが、慣れないので気を抜くとそのまま気が遠のいて蒸し焼きになってしまいそう。結局10分程で我慢できなくなって、その後は普通のお湯に入りました。この周辺は、旅館や風呂屋だけでなく、あちこち路面からも蒸気が立ちこめていて、地獄の地と伝えられたのも納得です。夜は海鮮、地獄蒸し、いろいろな地元料理を頂きました。美味しかったです。僕はそれなりに料理はしてきたのですが、「蒸す」ことはあまりやってなかったな。油を使わないし、栄養価も高くてヘルシーです。しかもここでは天然蒸気で料理が出来るというエコ。夏も本番なので、体力をつけて乗りきらないといけませんね。

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ピアノ選び、行き着く先は

荒れ狂う天気の3連休に、博多駅のJRホールでピアノフェアがありました。生徒のピアノ選びの相談をされる事があるので、電子ピアノから海外の高級ピアノまで勢揃いするこの機会に覗いてきました。上位モデルの電子ピアノを使用したコンサートや、ザウターピアノ(ドイツ製)のセミナーなども企画されていて、商品のPRだけでなくお客さんも楽しめる内容のフェアでした。電子ピアノ選びは、メーカーの特徴と機能をいくらか考慮すれば特に神経質になることはないと思いますが、注意すべきは中古ピアノ。最近は新品ピアノの販売数は減少し、変わりに中古が数多く出回っています。ヤマハやカワイの新品は以前に比べて随分高くなりました。長く続く景気低迷も影響してか、国産グランドの中古などは、どの楽器店でも出せばすぐ売れる状態のようです。オーバーホールの具合と価格の適正は素人では判断のつきにくいところ。中には価格だけ表示され、ほぼ下取りしたままのピアノを置いている店もあります。今回は大型楽器店のフェアで、若干強気の価格設定がされている印象でした。相場より1、2割増の価格は、高級ピアノでは相当な差ですね。ザウターピアノは、ドイツによくある昔ながらの大工のピアノ。懐かしい匂いがするけど、日本では立派な価格がついていてビックリ。音が地味なのにデザインが何やらモダンに進化していてアンバランスに感じました。他にも装飾の施された家具調のピアノがちらほら目につきます。ピアノは視点を変えれば趣向品なので、これから海外の珍しいメーカーのピアノも増えてくるかもしれません。毎日練習するならば、ピアノは極めて実用品です。そう考えると国産ピアノの優秀さと価格の適正さは群を抜いています。コンサートピアノとなれば依然としてスタインウェイが最有力。時に期待を遥かに上回る、潜在能力を秘めた楽器です。ともあれ、どんなピアノでも眠らせずにたくさん弾いてあげること。音を出すのは他でもない自分なのだから。

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永遠の故郷

吉田秀和が最後に執筆した「永遠の故郷」を読み進めているところです。学生時代には、彼の朝日新聞の連載「音楽展望」などで少なからずの影響を受けました。僕がクラシックに熱烈にのめり込むきっかけになったピアニスト、グレン・グールドの才能と、それを受容する新時代の到来にいち早く気づいた日本人評論家でもありました。彼の文章は専門分野の評論であっても、読み物として面白く、奥深く、愛情に溢れています。永遠の故郷を読むと、彼自身が音楽と共に人生を歩んで幸せだった、というのが自然と伝わってきます。好きな事柄について語る事で、自らを語っているような希有な評論です。内容は全四巻とも吉田秀和が選んだ歌曲についての散文。

 

少し前には村上春樹と小沢征爾の対談の本も話題になりましたね。この本をきっかけにクラシックを聴くようになったという知人も何人か居るくらいです。村上春樹は猛烈なクラシックとジャズの愛好家。小説にもマニアックな音楽描写と、美味しそうな料理の描写は同じくらい沢山出てきます。どちらの本も、曲を具体的に説明してああだこうだと書いてあるので、自ずとその音楽が聴きたくなります。というか実際に聴かないことには話についていけませんから。永遠の故郷は、本で取り上げられた曲の録音と解説がセットになったものが出版されているようです。やはりこちらも気になります。youtubeで検索しながら読むのは味気ないし。

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節電と練習

気がつけば、先月のブログ更新は僅か2回。今月は頑張ります。節電が広く求められる中、後ろめたい気持ちでエアコンのスイッチを入れる今日この頃です。今朝の一面には関西電力の原発稼働の記事がでっかく載っていました。慣れとは恐いものですね。ドイツのベルリン郊外をICEに乗っていると、暫くの間(ハッキリ覚えていないが15分程だったか)広大な風力発電畑が続いていました。日本での原発事故など考えもしなかった数年前の事ですが、事故後に即決されたドイツの脱原発案を聞けば納得。エアコンに限って言えば、ドイツの夏はそれなしでもずっと快適なのだけど。先週はテノールの友達から楽譜が送られてきました。近いうちに一緒にやろうとのことです。伴奏の練習量も増えて、レッスン室の「原発」も稼働。しかもこの時期はピアノに大敵の湿度がとても高く、プラスして除湿器もフル稼働させたいところですが、今の世論を考えると悩ましいところです。シューマンの歌にも言わずと知れて傑作が多いです。今回はリーダークライスop.24に取り組んでいます。シューマンの幸せな「歌曲の年」の幕開けに作曲されたもので、さりげなくもハートフルな連作歌曲。弾くのは暑いけど、気分は爽やかになります。ハイネの歌詞も素敵。

 

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梅雨の晴れ間に

土砂降りの翌朝、久しぶりにすっきりした気分で目覚めました。それでも湿度はかなり高いらしく、除湿器のタンクは4、5時間程で満タンになってしまいます。明日からは引き続き台風の影響で大雨のようです。昨晩、異常なまでに猫が鳴いてたのですが、今晩も全く同じ鳴き声が続いています。一体何事でしょうか。家は交通量の多い車道の角地で、普段猫の鳴き声が気になる事はありません。声の調子はニャオ、ニャオと甲高く間を置かずひっきりなしに繰り返す感じです。周りの騒音を突き抜けて響き渡っているので、猫なりに相当な理由があるのでしょう。試しに<鳴き声で分かる猫の気持ち>というサイトを見てみると、猫の鳴き声には16種類以上あるらしく、そのイントネーションによって様々な猫の言葉を理解できるそうです。察するにこの猫は「強い要求」をしているようです。梅雨の晴れ間に猫が鳴くと聞けば、風情がありそうなものですが、残念ながら猫が歌に登場するのは繁殖期の春のようです。梅雨入り前のホタルは季節感があってよかったですね。福岡市近郊でも見れる所があるよ、と誘われて行ってみました。ホタル客用の露店も、風情を演出。そういえば、鳥の鳴き声はとても音楽的だということで、オリヴィエ・メシアンはそれらを収集して全7巻から成る「鳥のカタログ」という長大なピアノ曲集を作りました。猫の鳴き声はそういう訳にはいきませんね。

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ピアノ教則本

楽器店に行くと、作曲家別の楽譜コーナーとは別に「ピアノ教則本」のコーナーがあります。近年この「ピアノ教則本」コーナーの充実ぶりは凄いです。沢山ありすぎて、いったい何がスタンダードなのか分からなくなっています。今では戦前からの確固たる定番だったバイエルも若い世代からしだいに敬遠されるようになり、ピアノ初心者は皆これ一冊!の「バイエル神話」は崩壊しつつあります。また指の基礎練習ハノンを、順にページをめくって進める指導者も少ないでしょう。これに変わり、アメリカ系のイラストだらけの数冊セット教材に加え、日本の大手出版社からもその真似事のようなものが次々に登場し、その他大人のピアノシリーズも乱入して楽譜コーナーの大半はテカテカしたカラフル教本で占められています。僕はとても批判的な性格なのでバイエル、ハノンは明治の遺物であり、その他テカテカ教本セットは商業主義の真骨頂だと思っています。もちろんテカテカ教本の中にも感心すべき教材はありますが。

 

ドイツをはじめヨーロッパの楽譜屋は、あくまで楽譜屋であり、楽器別、作曲家別の楽譜が所狭しと並んでいます。他には少しの教材と、レジ横に音符絵柄の鉛筆があるくらいで、理解に苦しむレッスン便利アイテムや、発表会グッツも見た事がありませんでした。なぜ日本ではこれほどまでにピアノ教材が溢れているのでしょう?原因の一つはピアノ指導者にあるような気がします。まずバイエル、ハノン系の教材。これは大半の指導者が「自分がコレで習ったから」という理由で、なんの疑いもなく生徒にもやらせてきた悪しき習慣です。コレしかないならともかく、いくらでも素材はあったはずです。次に近年の教本。とくに初歩段階の教材は教える側にはありがたいです。毎回レッスンの内容を練ったりその場で考えたりしなくても、ページをめくっていけば、ある程度ちゃんとしたカリキュラムが組めるからです。ピアノを少し弾ける人ならば、教本を手に取って簡単に指導者になる事ができます。まさにピアノレッスンの便利グッツ。便利な反面弊害は大きい。「ピアノを何年も習った事があるのに、今では自分の楽しみのためにすら弾かない」という人が多いです。これは、早い段階で本物の曲に出会えなかったから、レッスンの現場で一緒に考えたり、音楽を共感した経験が乏しいからではないか。素材選びは大変重要です。教則本というのは新旧ともに疑問点を多く含んでいます。大事なのは繰り返し創造すること。人の成長、特に子供は教則通りに行かないことがほとんどです。音楽とピアノ演奏の原理を理解して、しっかりと柔軟にレッスンができれば、子供らしく魅力的な演奏になると思います。

 

 

 

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けやき通り音楽祭

先週は福岡けやき通り音楽祭が開催されていました。福岡市美術館、周辺の各店舗、警固教会も会場になって、ジャンルを問わず、音楽があちこちで流れていたようです。会場に向かうけやきの並木道は緑のアーケードのように覆われています。天気のよい日曜日なのでかなりの人通りがあり賑わっていました。この辺りは、天神周辺の雑踏から離れて、こだわりの店が多く路地裏探検も面白いです。これから回を重ねるごとに音楽祭の存在も広く知られて、コンサートに足を運ぶ人も増えるといいですね。僕はこの日、警固の音楽教室でショパンの小品を弾きました。このコンサートは他の会場とリンクして、「めぐりあいの音楽会」というタイトル。主に地元のミュージシャンが出演しました。一つ目のコンサートを聴けば、二つ目のコンサートにも入場できるので、例えばJazzを聴いて二軒目でクラシックという聴き方も可能。ということでコンサートを「はしご」されたお客さんもいらっしゃいました。今まで知らなかった音楽に出会うという意味で、面白い企画だったと思います。演奏後は、前から気になっていたけやき通り周辺のお店で、ささやかに打ち上げをして帰りました。美術館のコンサートにはなんとアン・サリーが来ていたそうなので、ちょっと覗いてみたかったな。

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音楽にまつわるアート

アルゲリッチ音楽祭の翌日の帰り道に、湯布院に立ち寄った時の事に少し触れたいと思います。僕は以前から音楽の視覚的作用と美術の聴覚的作用について、考える事がありました。これは武満徹の音楽を勉強していた頃の影響です。湯布院の無量塔(MURATA)の運営する美術館アルテジオは、まさに音楽をテーマにした美術館でとても居心地の良い美しい空間になっています。武満徹の言葉に始まり、ジョン・ケージの作曲家のスケッチのようなアート作品や、アンディ・ウォーホルなどの大物作品もあります。また美術品とも言える美しいチェンバロに、ディアパソンのピアノ。弾かせて頂いた感じ、楽器の持つ音と空間の響きは見事な調和を成しています。また良い事に湯布院の中心からは離れていて、観光客がどやどや来る事もなく、ゆっくり作品の中に身を置きながら、併設されている図書室で画集をみたり音楽書を閲覧する事ができます。こういった夢や理想が独りよがりの趣味で終わるのではなく、ここは一般に開かれ経営されている点で更に驚きです。オーナーの方は相当なセンスと時代感覚の持ち主だったようで、美術館以外にも広い敷地には宿泊、お菓子屋、バー、蕎麦屋などこだわりを感じるものばかり。ここのロールケーキは有名なので知っている方も多いかもしれません。

 

実はかれこれ15年近く前の小学生の頃、オープン当時の施設一帯を訪れた記憶があります。バーのグレープフルーツジュースが800円で、一気に飲み干したいところを我慢して、子供ながらに大事に飲んだような。多少知能が発達した今改めて眺めてみても、内容のある「新しいセンス」だなと思います。まことに世の中には10年、20年もっと先を歩いている人物がいるものです。

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アルゲリッチを聴きに

別府アルゲリッチ音楽祭の最終日を聴きに行ってきました。現代のピアノ界には優秀なピアニストが星の数ほど存在します。「天才」が現れては消えるのが常のこの世界で、トップアーティストの座に半世紀にわたり君臨し続ける女性を一度拝んでおきたいと楽しみにしていました。今更アルゲリッチの凄さを語るのもなんですが、やはり彼女の演奏には是が非でも聴きたくなる「何か」が内在していました。特に僕は追っかけでもないので、数枚のCDやメディアから知る限り、以前のアルゲリッチはアグレッシブで情熱的に駆け抜ける印象でした。白髪の分量が勝り始めた今日は、魅惑的にも落ち着いた感性と時折見え隠れする切れ味のよいドライブ感が心地よく、もう少し聴いていたいと思いました。曲目は、シチェドリンの新作「チェロとピアノのための協奏曲」、ドビュッシーのチェロソナタとアンコールひとつ(曲名は分からないが、とにかくマイスキーのチェロとメロメロに弾いていた)。

 

せっかく別府に来たので、温泉に入って一泊。帰りは湯布院に立ち寄ってきました。昔ながらの温泉町の別府に比べて、湯布院は都会的なセンスで観光化されています。写真は別府湾SAからの眺め。湯布院発の有名なMURATAが運営しているようで、ちょっとした観光スポットになっています。

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「ます」の意味

ドイツ歌曲の伴奏の機会があって、シューベルトの「ます」を和訳してみました。ストーリーは単純なので、要約すると「澄んだ小川にますが泳いでいた。釣り人が来たが水が澄んでいるせいで上手くいかない。釣り人は悪知恵を働かせ、水を濁らせてますを釣った。見ていた私は嫌な気分になった。」というもので、なにげない日常の一コマのような詩です。歌手の方に教えてもらって初めて知ったのですが、この話には付け加えがあって、釣り人とますを男女のやりとりに例え、女の子はこの詩の「ます」にならないように気をつけてね、という教訓の意味があるそうです。さすがドイツ文学、ちょっとした事でも深いなあと感心してしました。ピアノの伴奏音形は、ますが矢のように水中を行き来している様を描写しているようです。シューベルトのピアノ五重奏にも同じメロディーが使われています。シンプルで覚えやすいのでクラシック名曲選などによく入っていますね。それにしてもシューベルトのメロディーは、口ずさんだら自然に湧いてきたように、ごく自然でさりげないなと思います。全く美しい。他に「魔王」もやろうかという話になっているのですが、例の右手が吊りそうになるのが嫌で、まだ手をつけていません。

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日時計の丘に流れた時間

昨日は「日時計の丘」ホールでのコンサートでした。このホールには知る人ぞ知るブルートナー製のピアノがあり、音色がとても良いので楽しみにしていました。住宅地の丘からの眺め、庭の楠がザワザワ揺れる緑の音、絵画コレクションなど、街中のコンサートホールで身構えて聴くコンサートとは違った、出かける楽しみもあってか、たくさんのお客さんに喜んで頂けたようです。肝心の演奏は冷静な診断の余地が多いに残る内容でしたが、ひとつ良かった点は、会場の「よい雰囲気」をいくらか背中に感じたことかもしれません。「日時計の丘」は初めて訪れるには少し不便で分かりにくい場所にあります。ところがそれが逆に良い方に作用すれば、音楽を聴きに小高い丘に登って行こうとするちょっとした意思と(車で登ればなんてことはない)、その意思を迎え入れる開放的で穏やかな空間がちょうどよく、そこに調和のとれた時間が流れているように思います。音楽を聴くゆとりが生まれる、意外にありそうでないホールですね。今年はバッハ連続演奏会など、コンサートが企画されているので、是非お越し下さい。演奏後の写真です。ピアノには天窓から自然光が差し込んでいます。

 

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武満徹の歌

好きなメロディーを歌ってみてと言われたら、まず挙がってくるのは青春時代の懐メロでしょうか。ビートルズのそれなどは、団塊の世代のみならずみんな一度は聞いた事のあるシンプルでメッセージ性があるとてもいいメロディーですね。クラシックで偉大なメロディーメーカーといえば、なんといってもオペラ作曲家のモーツァルト、それから歌曲を数多く書いたシューベルト。どう転んでも武満のピアノ曲を歌いだす人はいないと思います。

 

ある記事で、武満徹はタケミツトーンで有名だが、メロディーが書けなかった作曲家だったといった主旨のものを読んだ事があります。それもけっこう名のしれた作曲家の話なのです。眠い、退屈という批判もよく聞きます。確かに分からなくはないけれど。songsにはとてもいい曲がたくさん入っているし、ギターのための12の歌はオリジナルのメロディーではないけど、絶妙のアレンジになっています。よそのメロディーをアレンジした=メロディーに憧れていた=書けなかった、というふうにこじつけたのかな。僕の印象では、とても趣味の良いメロディー作家であると同時に現代曲の分野では、日本人の時間の感覚を呼び覚ますような、ナチュラルで原始的な声を書き留めた人だという感じです。やはりカリスマ性があると、アンチを掲げる同業者も多いですね。写真はお勧めの本。武満エッセイの抜粋と、視覚的な魅力に触れられるアートな一冊。「Visions in Time」

バターの価格

浅蜊が旬なので、エリンギと一緒に酒、バターで蒸してネギを散らせば、ちょっとした一品になります。貝の酒蒸しにはいろいろな組み合わせがあります。中華では大きめの牡蠣を紹興酒で蒸したらよい前菜になるし、フランス、ベルギーなどは、鍋一杯のムール貝を白ワインでざっくりと蒸して、ひたすら食べ続けるというのも常道です。ボンゴレのパスタはイタリアのカフェでごく普通に置いてあります。楕円形の小さめの皿にもって、まさに小腹がすいたときにはもってこいです。スーパーで浅蜊が安かったので、バターでも買えば粋な昼ご飯が食べれるなと思ったのですが、そのバターの価格に仰天してしまいました。森永の普通のバターが200グラムで360円、もしくはちょっと高級バターになると200グラム650円ではないか。しかも選べるのはこの二通り。ドイツでは同量で70円〜120円程度だったので、暫くの間バターの前で立ちすくんだものの、ここまできて浅蜊を戻すのは格好がつかないので、思い切って(安い森永の方)を買いました。ボンゴレのパスタを作るにしても、必要なのは僅か15グラムくらい。日本製のバターは塩分がきつく、朝食べるパンに塗るということもありません。お菓子でも作らなければ、他に使い道が思いつきませんね。

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ウィンナーワルツを聴いて

まずはじめにリズムありき、とはよく言われる事で、時間芸術である音楽において、リズム感は大前提になります。日本人と西洋人のリズム感は、言葉や音楽はもちろん、歩き方を見ても違うと気がつきます。日本人がスタスタと地表を彷徨い足跡を落としていくように歩くなら、西洋人はスタンスタンと一定に、意志を伴った足跡を刻んでいるというか。そもそも根本的なリズム感が違うのだとしたら、日本人が西洋音楽を理解して表現するには、体内に脈打つ律動をいかに作品のそれと重ね合わせる事が出来るかが、最大の山かもしれません。

 

先日友人に誘われて聴きに行ったのは、ウィーンフィル、ウィーン歌劇場のメンバーを中心とした室内楽オーケストラでした。生粋のウィーンっ子らが弾くヨハン・シュトラウスなどのワルツやポルカは、やはり独特のリズム感が色濃く、一瞬でウィーン的だと感じました。アンコールなどはノリノリで「これがウィーンだよー」と言わんばかりの快演でみんな実に楽しそう。これが優秀な多国籍オーケストラだと、素晴らしくも、似て否なるものになるのかな。自分がもし団員に混じって、ヴァイオリンでも弾いてたとしたら、間違いなく周りの波長を乱してしまうでしょうね。このリズムは数あるクラシックの中でも、かなり縁遠い部類に属すると思われます。普段ピアノを練習していても味わえない音楽が聴けて、ちょっと華やかな気分で帰路につきました。

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日田へ行こう

福岡市は、九州の中心都市なのにホール事情が悪いことで有名で、音楽家、クラシックファンにとっては音響のよい専門ホールの設置が長年熱望されているようです。気候も良くなってきたので、ドライブがてら、大分県日田市の「パトリア日田」のホールとピアノの視察に行くことに。小さな田舎町の日田ですが、水と空気がきれいで、日本酒、うなぎ、豆田の街並など趣き深く、ふらっと日帰りで休日を過ごすのによい所です。桜の開花は福岡より少し遅れているようで、三隅川沿いの亀山公園では4分咲きくらい。それでも、なだらかで川幅の広い土手から眺める桜色は、青空にふんわりとやさしさを添えて春の到来を告げてくれます。

 

太宰府ICから50分程なので、日田のコンサートにも福岡からのアクセスが増えているとか。会場は、大、小ホール、複数のスタジオを備え、なんとびっくりスタインウェイD型2台+ヤマハCF3でフルコンサートピアノは3台常備してあります。人口僅か数万人規模の市営ホールが、立派なものです。今回はヤマハが使用中でスタインウェイを2台試弾させてもらいました。現在主にコンサートで使用されている一台は、アクションがまだ硬く、音色の幅、音量とも未開発といった感じです。大ホールの響きは反響板を立てた状態で概ね良好。もう一台はピアノ庫のなかで響きはさっぱり分かりませでしたが、弾き心地はよほど馴染んでいて、調律次第では本番でも十分力を発揮すべくスタンバイしているようでした。案内して下さった係の方が懇切丁寧に、保険か不動産の営業マンかと思うほどのサービス精神でご対応。ついでに観光案内までして下さり、最後は見えなくなるまで45度のお辞儀。市営施設でそんなことされたらこっちが恐縮してしまいます。おかげさまで、日田のイメージは豊かな自然、情緒ある街、立派なピアノ、明るいサービスの公務員というふうに確実にアップしたのでした。写真は帰りに見かけた看板です。何年前かな、レトロすぎる。

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春分

ふー、息抜きに市内の公園までドライブ。練習の毎日が続くと、疲労が蓄積されて、曲に接する新鮮な気持ちを失ってしまいがちです。疲労感とういのは、創造活動に必要なあらゆる感性とエネルギーを奪ってしまいます。それでも、時にピアノの練習は否応無しに迫ってくるので、弾き過ぎによる悪循環には本当に気をつけないと。この景色は大濠公園ではありません。どこでしょう?池の周りは桜並木が続いているので、暖かくなると綺麗でしょうね。明日から暦の上では春だそうですが、日本の四季は自然に移り変わります。今の時期は、外に一歩出て寒いと感じたり暖かいと感じたり、装いも難しいところです。ヨーロッパなどのサマータイム制は、一年を夏と冬に無理矢理「はいここまで。」と分割しているようで、不思議な感じでした。人の気配も春からは強烈に夏に向かい、秋かと思えば通り越して冬になっていたという具合です。疲れを取り除いて、今週からは気分を春に変えていきたいものです。

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ビシュコフの春の祭典

アムステルダム留学中、演奏会にでかけた時の事。その日の演目はセミョン・ビシュコフ指揮、アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団のショスタコービッチ作曲、シンフォニー15番(だったと思う)。友人が熱烈なファンだということで、一緒に出かけたのですが、生憎当日券が目の前に並んでいた人で売り切れてしまいました。そんな事もあるもんだ、くらいに思っていたら、遠方から来た友人は前売りを買っておけばよかったと、しきりに後悔している様子。それから聴く機会を逸して気に留めなかったのですが、先日テレビでN響を振っているのを見て、思わず見入ってしまいました。

 

曲は近代音楽の金字塔、「春の祭典」。ちゃんと振るだけで大変なのでしょうが、生き物のようなストラヴィンスキーのリズムを、深く多様に体中に漲らせて、指揮棒の動きに特化しています。複雑な筈の音楽が、とてもにシンプルかつ快活にどんどん立ち現れてきます。表情、見た目の面白さも申し分なく、行き過ぎるとお笑い芸人の◯ナナマンの片方に似ているようですが、そこには確かな知性が同居しているようです。オーケストラもよく鍛えられた機敏な兵隊のように、寸分のズレも感じさせずにフォローします。職人的な長所がよく発揮されているようです。ビシュコフのユーモラスで大胆な指揮ぶりには最後まで惹き付けられ、結局1時間のN響アワーを見終わっていました。こんな面白い指揮者だったと知っていれば、あの時もっと悔しがっていたのに。本当に生で聴きたかったです。

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なんでもデザイン

NHKのBSで、天海祐希が行く新オルセー美術館がありました。展示室の壁紙をどの色にするか。ルノアールの部屋にはグレーかダークグリーンのような色が採用されたのですが、さすが美術の都パリを代表するオルセーだけあって、その色は念入りに吟味されたようです。ルノアールの作品に多く使われている淡いピンク、黄色、ブルーなどを最も際立たせる色を50色作り、その中から一年がかりで一つの配合を決定したそうです。さらに照明にも徹底していて、使用される照明器具、自然光の割合を左右する天井のガラスも綿密に計算され採用したとのこと。その色彩に対するこだわりはさすがフランス人だと思いました。インタビューで話す白髪の色彩研究家も、バッチリ似合った微妙な赤のセーターを着ています。

 

もちろん、これは世界中から観光客が集まるパリのオルセーだからできることかもしれませんが、物事を引き立たせ合う配置の工夫というのは、生活するためのシンプルで経済的な知恵です。絵画を観ると、物の配置や色のコントラストなど、画家の表現からデザインする技を学ぶ事ができます。音楽も似たような物で、作曲家はあれこれと音という素材をデザインしているわけです。また、よい美術館や音楽ホールというのは、それらを鑑賞するために適した設計がなされています。こだわろうと思ったらきりのない世界ですが、世の中のあらゆる事象はデザインする事で更に快適かつ美的に洗練されるに違いありません。料理の盛りつけ、部屋のインテリア、都市設計、人事、人間関係に至まで。そう考えると芸術は生活するアイディアの源のようですね。日本でも、あらゆる職業に携わる人が芸術家に習ってデザインする感覚を持てば、世の中けっこうよくなる気がします。

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音楽の話4終了

ベニールカフェのイベント、第4回を迎える音楽の話「ショパンのピアノスタイル」が終了しました。今回は一番の盛況で、年齢も幅広く、小さなお子さんも静かに聴いてくれていました。ありがとう!ノクターンop.9-2に始まり、ショパンの生い立ち、ベッリーニの歌曲、チェロの話、ピリオド楽器について、最後にノクターンop.9-3と幻想即興曲の演奏で終えました。今回導入したPC用の小型軽量ステレオですが、マリア・カラスの迫力の声量に圧倒されて、完全に音が割れてしまいましたね。次回は他の方法を考えてみます。ベニールカフェも新たな常連客が増えているもよう。オーナーの真木さんご兄弟も忙しそうでした(写真)ショパンの音楽は、サロンによく似合います。有名なノクターンop.9-2、今まであまり興味がなかったんですが、このような雰囲気のある空間で弾いてみて、新たに曲のよさを実感しました。次回は3月16日(金)、テーマは「ドビュッシー、月の光」です。
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ショパンのメランコリー

ノクターンはショパンの重要なレパートリーで、中でもop.9-2は日本でダントツの人気を誇る有名曲です。一つは、メロディーが覚えやすく弾くのも割と簡単というのが人気の理由かと思います。それともう一つ、この曲が持つメランコリーの性質が日本人の趣向に合っているようです。和声は冒頭でベースラインが下降し平行調に転じるポップな進行です。長調の場合、曲が始まるやガラッと陰が差してメランコリーを誘います。邦画でもやたらに泣かせにかかる脚色がよくあるし、映画館を出て「めっちゃ泣けた〜」という感想はやはり我々日本人ならではの表現かも。メランコリーは重要なエンターテイメントの要素となっているようです。個人的には次の作品op.9-3は初期のノクターンの中でキラリと光る個性を放っているし、op.62-1は後期のポリフォニー指向がショパンの詩的メロディーと融合した名曲だと思います。どうかこちらも聴いてみて下さいね。

ブログお引っ越し

寒い日が続きますね。レッスン室の壁は旧式の打ちっぱなしなので、寒い冬には凍てつくように冷気が伝わって来ます。雪が降るような日には、暖房をフル回転させてもなかなか暖まりません。ヨーロッパや日本の北国などは、気候に対応した建物設計がなされていますね。外出する時は完全防備でも、中に入れば一安心です。福岡で雪が降るのは、年に一度あるかないかだと思いますが、かえってしんみりとした寒さが続く日本の冬は体にこたえるのです。昨日Newsでお知らせした「桜の詩」は、ちょっと季節的にフライングしてしまいました。毎年、数百曲の桜をテーマにした楽曲が作られるそうですが、世に出るのはほんの僅か。今年はどんな桜の詩が咲くのでしょうか。写真は福岡発「桜の詩」のCDジャケット。早く暖かくなってほしいですね。今までのエキサイトブログは、拙い文章でしたが、せっかくなのでそのまま残しておくことにしました。

 

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