アール・ブリュット・ジャポネ展を観て

福岡市美術館で「アール・ブリュット・ジャポネ展」が開催されています。アール・ブリュットって、「専門の教育をうけていない芸術家が表現した大胆なアート」という感じで記憶していて、そのまま展示室に入りました。解説を見ないで作品だけをふらふら観てまわるのが好きなので、この日もそのようにしていると、なんだかいつもと違う感覚に見舞われました。「なんだかいつもと違う。独特だ。」そう思ったんです。今まで観ていたアートを「いつも」と総称するのは変なのですが、やっぱり違う感覚だったんですよね。そこで画家の紹介をひとつずつ読んでみると、どれも精神疾患がある方の作品のようです。「アール・ブリュット」はそもそも、精神障害者の作品に関心があったフランス人画家が唱えた概念で、それが今では広義にとらえられて、素人芸術やアウトサイダーアートのような意味も帯びているのでしょう。これらの作品を観て驚かされるのは、視点の意外性と表現への執着。思いもつかないような角度から世界を観ている。そして、描き方に一切の迷いがない。なんだか、凄いんですよ。

 

人と違うという事がアートを生むのだとしたら、みんなアーティストなんじゃないか。そもそも人間って程度の差こそあれ、みんな疾患があるんじゃないか。疾患は個性じゃないか。そんな考えが頭の中をグルグル回っていました。美術館を出た頃には、大濠公園を行き交う人達みんなが「アール・ブリュット」に見えてきました。