武満徹の歌

好きなメロディーを歌ってみてと言われたら、まず挙がってくるのは青春時代の懐メロでしょうか。ビートルズのそれなどは、団塊の世代のみならずみんな一度は聞いた事のあるシンプルでメッセージ性があるとてもいいメロディーですね。クラシックで偉大なメロディーメーカーといえば、なんといってもオペラ作曲家のモーツァルト、それから歌曲を数多く書いたシューベルト。どう転んでも武満のピアノ曲を歌いだす人はいないと思います。

 

ある記事で、武満徹はタケミツトーンで有名だが、メロディーが書けなかった作曲家だったといった主旨のものを読んだ事があります。それもけっこう名のしれた作曲家の話なのです。眠い、退屈という批判もよく聞きます。確かに分からなくはないけれど。songsにはとてもいい曲がたくさん入っているし、ギターのための12の歌はオリジナルのメロディーではないけど、絶妙のアレンジになっています。よそのメロディーをアレンジした=メロディーに憧れていた=書けなかった、というふうにこじつけたのかな。僕の印象では、とても趣味の良いメロディー作家であると同時に現代曲の分野では、日本人の時間の感覚を呼び覚ますような、ナチュラルで原始的な声を書き留めた人だという感じです。やはりカリスマ性があると、アンチを掲げる同業者も多いですね。写真はお勧めの本。武満エッセイの抜粋と、視覚的な魅力に触れられるアートな一冊。「Visions in Time」