大人の寛ぎ

今更ルービンシュタインのショパンが素晴らしいことを書いても平凡な記事になってしまいそうですが、やはり一度は彼のピアニズムについて触れておきたいと思います。僕が音楽を志した12か13歳の頃、ピアノの恩師の家にこのCDボックスが置かれていました。なにしろ10枚組くらいのアルバムだからきっとそれなりに値打ちのするものだったと思います。ショパンの曲を仕上げた際には時折このボックスが解禁され、ビロードのように上質なショパンの歌がレッスン室を満たしました。エレガンスという言葉をたぶん当時は理解できなかったけれど、それが決して猿真似できるようなものではなく、人が生来備えている品位と芸術家の鍛錬によるものだということをなんとなく想像した気がします。とんでもない技術を「ぼく、とんでもないよ〜」と主張する演奏は割と多い。けれど、ルービンシュタインの演奏はあくまでスタイルに忠実で、音楽の根幹であるリズムが真に正確であるがゆえ、聴き続けても決して飽きることがありません。

 

今はこんなショパンボックスが僅か三千円足らずで手に入るよき時代。YOUTUBEで手軽にポチポチ聴けるのは便利だけれど、ゆっくり腰を下ろして音楽に耳を傾けたいですね。とくにルービンシュタインのショパンは大人の寛ぎにふさわしい。片手に何を持つかはあなた次第だ。僕は先日からマズルカ、ポロネーズの順番に聴き進めたところで、今夜あたりノクターンに入ろうかと思っています。