マティスの部屋で天気待ち

いい音楽を聴くと、もう一度聴きたいと思う。絵も同じで、いい絵は何度観ても飽きない。初めて観たときの印象は時に鮮烈だったり、時にぼんやりと感じたりでまちまちだけれど、もう一度絵の前に立ったみると「やっぱこれなんだよな」としみじみと感じることができるのですね。いい絵に限って、不思議と。


久留米の石橋美術館には素晴らしい近代画が何点かあります。最近は姉妹美術館のブリジストンからマティスのコレクションが9点とモネ、ルノワール、ルオー他、有名作家の作品も数点来ていたようなので、行ってみました。この美術館はふらっと観て回るにはちょうどよい規模だし、福岡からも車で一時間と程よい距離。ヨーロッパの巨大美術館とは比べ物にならないくらい小さいけれど、一日で鑑賞出来る大きさといえば、おおよそ石橋美術館くらいではないかと思います。まあ、僕の体力による訳だけれども。


エントランスにはいつも豊福氏の彫刻が二点、まるで近衛兵のように、にこりともせずにすっと立っている。福岡ではすっかりお馴染みの楕円形のモチーフ。白黒で撮ってみると見え方が違って面白いです。陰が立体の実在を語っているようです。あるいは、立体からふにゃふにゃと離れて、そのまま出て行ってしまいそうな気も、しなくはないですか。特にマティスの部屋が気に入ったので、一周観て回ったあとに、もう一度椅子に腰掛けて眺めました。外は急に土砂降りの雨です。傘はなし。雨上がりを待つにはなんとも贅沢な部屋だこと。