うどん屋の流儀

糸島から唐津街道を通って福岡へ帰る途中に、牧のうどんの看板が目に入りました。午後8時近くだというのに、今日は殆ど食事らしいものをとっていません。無性にフニャフニャした博多うどんが食べたくなり、駐車場に吸い込まれていきました。ここは県内十数店舗あるなかで、確か創業時代からある店舗のはず。かき揚げが積んであるカウンターの前に座り、油物を食べたい欲をねじ伏せてたまご入りのうどんを選択しました。プチ減量中なのです。かしわおにぎりは付けるけどね。注文票に自分で書き込みます。

 

厨房の端から端まで製麺機が鎮座し、麺が運ばれる先には湯で窯が待ち受けている。そしてその茹で上げた麺を冷水でしめないままスープを注ぎ、顔中にうどん粉のようなオシロイを塗ったおばちゃんたちが手際良く運んでくれるわけだ。釜揚げされた麺に出汁が入るので、当然麺は出汁を吸いまくって2倍くらいに膨張する。食べ応え十分。出汁はすでに麺が吸い込んでいるので、これではスープを飲みたいうどん派からはクレームが殺到するだろう。その対策というわけではないだろうけれど、「出汁が欲しければ勝手に入れやがれ」と言わんばかりに、注ぎ足し用の出汁がやかんでついてくる。このシステム、他県からみればかなり奇抜だと思います。うどんの値段はワンコインでお釣りがくるほど安い。店は飾り気がなく古びてはいるけれど、不潔な感じがしないし、特に厨房の清潔さはいつも目を見張るものがあるんですね。「うどんを早く安く美味しく食べたいなら、こうなっちゃうよ」という必然的な理由で、店構え、製麺、調理、サービス等、このスタイルに辿り着いたのだろう。首尾一貫していいですなあ。僕は間違って注文表の「かしわめし」にチェックしていたようで、オシロイのおばちゃんはすぐにめしを炊飯器に放り投げ「かしわおにぎり」に変えてくれた。スピーディーで柔軟な対応がまた素晴しいじゃないですか。