モーツァルトの直筆譜

ハンガリー国立博物館でモーツァルトの直筆譜(トルコ行進曲付きのソナタ)が見つかり話題になりました。話題になったといっても日本ではクラシック好きの間で、というか一部のマニアの間だけかもしれないですね。モーツァルトの直筆譜を手にする気持ちを想像するとゾクゾクしてきます。僕はNHKのデジタルニュースで初めて知ったのですが、恐らくヨーロッパのメディアではかなり取り上げられたのではないかと思います。何と言っても、モーツァルトの直筆譜ですからね。このニュースについて鼻息荒く話すドイツの音楽学者の様子が僕の目にはかなりリアルに思い浮かんでしまうのは、7年の留学の後遺症とも言うべきでしょう。でも、それだけ彼らにとって歴史的音楽は誇りなのだと思いますよ。何と言っても、モー!やめておきましょう。マニア臭が出てきそうです。

そんなマニアは休みの日にドイツ語のヴィキペディアやハンガリー国立博物館のサイトを訳しながら読んで、幾つかの情報をゲットしました。これまで存在していたA-durのソナタの直筆譜はたった1ページだけで、残り4ページが新たに見つかったらしい。以前発見されていたページは、僕の訳が間違っていなければトルコ行進曲のエンディング部分。新しいページで一音か、ほんの少しだけリズムが違っていたとしても、けっこう目立つんじゃないかな。有名なトルコ行進曲ですから。このソナタの一楽章は美しいヴァリエーション(変奏曲)です。ハンガリー国立博物館のプレスリリースによると、すでに直筆譜に基づいた演奏会を館内で行ったという。トルコ行進曲付きA-durのソナタが書かれた時期に、モーツァルトが使用したであろうワルター製のフォルテピアノによる演奏で。しかも、演奏したピアニストがハンガリーの名ピアニスト、ゾルタン・コチシュだというから更に驚きだった。ほら、けっこうあちらでは盛り上がってるじゃないですか。何と言っても、モーツァルとの直筆譜ですから。演奏会の模様はさっそくYouTubeにアップされていたので聴いてみました。現在使われている楽譜に比べると、より直筆の方が遊び心がありユーモアを感じるのです。楽譜の中ではほんの小さな部分なのですが、デザインの世界でも言われるように「神は細部に宿る」に違いない。

調べを進めると、今では直筆譜を保存しているヨーロッパの図書館や博物館ではオンラインでファクシミリを公開しているということが分かりました。例えばベルリン国立図書館では「魔笛」や「ドン・ジョバンニ」、ピアノコンツェルトkv.482など全ての直筆譜が閲覧できるのです。これはもう見始めたら寝不足になってしまうので、一時間程でやめました。