五嶋みどりさんの自己分析

五嶋みどりさんといえば、言わずと知れたヴァイオリン界の神童だった人です。僕は一度だけお目にかかったことがあって、留学先のリューベックで毎年開催されていたシュレスビッヒ・ホルスタイン音楽祭で「日本の音楽」がテーマになった年。何年だっただろう。まあそんなに昔のことではなくMidoriさんはとっくに大人になられていた。音楽祭の一環で大学に一流の演奏家が教えに来ていて、その時のMidoriさんは質素なワンピースにサンダル、お化粧も控えめ、(あるいはすっぴんだったかもしれない)ナチュラルで目立たない印象でした。大学を歩いているときは取り巻きもいなかったので、本当に普通のおばちゃんのようなのだけれど、ひとたびヴァイオリンを持つとバッとマスコミの注目を集め生徒達の目を真剣にした。普段は思わなくても、その時ばかりは「楽器が弾けるというのは特別なことなんだな」といたく感心した。

 

前置きが随分と長くなってしまいましたが、先日ある新聞の特集で五嶋みどりさんを取材してありました。輝かしいキャリアの中でも病院での演奏など社会福祉活動に長年取り組んでこられた思いが多く語られていました。始めた当初に「コンサートに専念すべき」だとか「売名行為」だとか言われたこともあったらしいですね。でも、続けること20年。福祉活動は今のアーティストとしての存在を支えるものになったそうです。僕は現代を生きる若い演奏家は能力を生かして様々な活動ができると考えているし、コンサートホール以外で社会貢献する事は音楽家の使命だと思います。なんだか手あかのついた表現でつまらないですね。つまりは、いろんな人のために音楽が必要だということが言いたい。

Midoriさんが自己評価する能力(写真)。世界を渡り歩いたあげく語学力が10位ですか。音楽そのものが言語ですもの。同感です。意外なのは体力が8位だということですね。僕の知っている音楽家はだいたい体力があり、羨ましいところでもあります。それから1位に分析力・洞察力、集中力、決断力、運を挙げているところから、一瞬を捉まえる能力に長けているというのが推測できます。さすがコンサートアーティストです。今の僕がこの能力リストの中からどれか一つ手に入れる事ができたら、Midori さんの「集中力」を頂戴したいな。なんて思ったり。