インベンションが好き

この頃、小学生のレッスンに導入したバッハのコラール(賛美歌)の聴音。各パートを聴き分けて楽しく歌っています。4声のコラールに慣れて自然な和声感覚が身に付けば、見据えるのはバッハのインヴェンション。その先には広大なクラシック音楽の大海原です。インヴェンションは2声の対位法ですが、根底には豊かなハーモニーがたゆみなく流れています。「聴こえる耳」が育っていれば、きっと楽しいはず。

 

ピアノを習った方なら一度は耳にしたでしょう。バッハのインヴェンション。子供のレッスンでインヴェンションにこだわる理由は、求められる能力の多様さと、得られる音楽性の多様さにあります。ところが、幼い頃からピアノを習っていてもインヴェンションでつまずいてピアノが嫌いになるケースがとても多いのです。子供のコンクールでは、上手に弾いているようで無味乾燥な演奏が目立ちます。きっと分かりにくいんでしょうね。子供にとって、そして先生にとっても。だったらやらなくてもいいじゃない。確かに、嫌いになるくらいならやらない方がいい。でもつまずくという事は何かが欠けている訳ですから、そのまま続けてもなかなか上達しません。譜読みが大変、塾に行かなきゃとなって、小学校5、6年くらいに辞めてしまいます。ゴールデンエイジにピアノを練習しているかいないかで、習得度には大きな差がつきます。結局大事だったのはインヴェンションに差し掛かる前に「聴こえる耳」にする、言わばピアノを弾く土台作りにあったと言えるのです。音楽の父大バッハの残した、音楽を愛する人類のための教科書。ありがたや。