永遠の故郷

吉田秀和が最後に執筆した「永遠の故郷」を読み進めているところです。学生時代には、彼の朝日新聞の連載「音楽展望」などで少なからずの影響を受けました。僕がクラシックに熱烈にのめり込むきっかけになったピアニスト、グレン・グールドの才能と、それを受容する新時代の到来にいち早く気づいた日本人評論家でもありました。彼の文章は専門分野の評論であっても、読み物として面白く、奥深く、愛情に溢れています。永遠の故郷を読むと、彼自身が音楽と共に人生を歩んで幸せだった、というのが自然と伝わってきます。好きな事柄について語る事で、自らを語っているような希有な評論です。内容は全四巻とも吉田秀和が選んだ歌曲についての散文。

 

少し前には村上春樹と小沢征爾の対談の本も話題になりましたね。この本をきっかけにクラシックを聴くようになったという知人も何人か居るくらいです。村上春樹は猛烈なクラシックとジャズの愛好家。小説にもマニアックな音楽描写と、美味しそうな料理の描写は同じくらい沢山出てきます。どちらの本も、曲を具体的に説明してああだこうだと書いてあるので、自ずとその音楽が聴きたくなります。というか実際に聴かないことには話についていけませんから。永遠の故郷は、本で取り上げられた曲の録音と解説がセットになったものが出版されているようです。やはりこちらも気になります。youtubeで検索しながら読むのは味気ないし。