音楽にまつわるアート

アルゲリッチ音楽祭の翌日の帰り道に、湯布院に立ち寄った時の事に少し触れたいと思います。僕は以前から音楽の視覚的作用と美術の聴覚的作用について、考える事がありました。これは武満徹の音楽を勉強していた頃の影響です。湯布院の無量塔(MURATA)の運営する美術館アルテジオは、まさに音楽をテーマにした美術館でとても居心地の良い美しい空間になっています。武満徹の言葉に始まり、ジョン・ケージの作曲家のスケッチのようなアート作品や、アンディ・ウォーホルなどの大物作品もあります。また美術品とも言える美しいチェンバロに、ディアパソンのピアノ。弾かせて頂いた感じ、楽器の持つ音と空間の響きは見事な調和を成しています。また良い事に湯布院の中心からは離れていて、観光客がどやどや来る事もなく、ゆっくり作品の中に身を置きながら、併設されている図書室で画集をみたり音楽書を閲覧する事ができます。こういった夢や理想が独りよがりの趣味で終わるのではなく、ここは一般に開かれ経営されている点で更に驚きです。オーナーの方は相当なセンスと時代感覚の持ち主だったようで、美術館以外にも広い敷地には宿泊、お菓子屋、バー、蕎麦屋などこだわりを感じるものばかり。ここのロールケーキは有名なので知っている方も多いかもしれません。

 

実はかれこれ15年近く前の小学生の頃、オープン当時の施設一帯を訪れた記憶があります。バーのグレープフルーツジュースが800円で、一気に飲み干したいところを我慢して、子供ながらに大事に飲んだような。多少知能が発達した今改めて眺めてみても、内容のある「新しいセンス」だなと思います。まことに世の中には10年、20年もっと先を歩いている人物がいるものです。